待望のベン・アフレック監督最新作は、Amazon資本でスポーツシューズメーカー、NIKEの隆盛の歴史を描く。
オープニングはダイアー・ストレイツの"Money For Nothing"で一気に1980年代へと誘う。勿論この曲のタイトルがNIKEのその時を象徴していることは言うまでもない。
NIKEは1984年当時アディダス、コンバースに次ぐ業界3位。あらためて検索してみると、
なるほど。発祥は日本資本だったのね。
上位二社に及ばない業績で営業部門にソニー(マット・デイモン)が招聘されるところから物語は始まる。招聘した社長フィル・ナイト(ベン・アフレック)は仏教に傾倒する変人。そしてこの二人洋服の趣味が酷い。ソニーは無頓着でダッサいポロシャツ、フィルは悪趣味。服の趣味で二人のキャラクター付けをするアフレック演出。
ソニーは家族も持たず仕事中毒振りが際立つ。狙うはマイケル・ジョーダン。業界最下位のNIKEがスーパースターと独占契約を結ぶまでが描かれる。
話が単純な分、とにかく出て来るキャラクターの面白さで魅せ切る。極め付けがジョーダンのママ、デロリス(ヴィオラ・デイヴィス、名演)のステージママぶり。
キング牧師の演説をヒントに行動と言葉で奮闘するソニーの姿はこれぞ" Just Do It"のNIKEスピリット。随所にその言葉の深みを多面的に表現する巧み。
アフレック監督、デビュー作「ゴーン・ベイビー・ゴーン」(2007)以来、アメリカ映画の少し前のクラシックスタイルで時に'80s、'90sのフレーバーを効かせる趣向は本作でもブレない。20世紀型なところが「アメリカ映画とは何かをわかってる」監督。
この味わいが僕らの観てきたアメリカ映画だ。近年のオスカー受賞作を眺めていても変化球ばかりで正直疲れる。
全体にお気楽なムードも悪くない。いちアフレック監督ファンとして贔屓目で傑作、お勧め。あくまで贔屓として。