よく出来た脚本なので航空機の専門家による原作があるのだろうかと思ったらオリジナル脚本のようだ。クレジットには監督を含め4人の名前。かつての黒澤明方式なのか、と想像してしまうくらいキャラクターが際立っていて、先が読めそうで読めない展開は最近では随一の面白さ。
あまり予備知識無しで観た方が良いかと思う。夫婦でフランスの航空業界に働くマシュー(ピエール・ニネ)とノエミ(ルー・ドゥ・ラージュ)。
職住を同じくするマシューの方は仕事中毒、技術系のオタク、ノエミは有能で出世浴満々という設定が効いている。マシューが「聴くことのプロ」故に想像力も働くという描写が面白い。
ある航空機墜落事故を巡る疑惑を追うサスペンス、ちゃんと空港や飛行機格納庫で撮影していてそんなことは絶対に許可が出ない文化果つる極東の島国との彼我の差に嘆息する。
が、フィクションとはいえその結末は我が国の政治の現実とシンクロして慄然とさせる。これ以上は何も書けない、観て確認して欲しい。シャープなルックも素晴らしい。
極上サスペンスだがジュテームが通底しているのがフランス映画、佳作、お薦め。