映画和日乗

映画、食、人。西に東に。

映画「道草キッチン」2025年11月公開  

「ブルーボーイ事件」監督・飯塚花笑 at OSシネマズ ミント神戸

blueboy-movie.jp

 公式サイトを見ると謝罪文が。センシティブな題材だけに細心の配慮が必要という事なのだろうと想像する。

飯塚監督とは前作「世界は僕らに気づかない」(2023)に私の「フィリピンパブ嬢の社会学」の原作者が協力していた縁で直接話す機会があった。普段はニコニコ顔の好青年だが、こんな堂々たる作品を創り上げた事に素直に敬服する。

1965年、東京(ロケ地は群馬県のようだ)が舞台。本編の裁判審理のシーンで「アメリカでは性転換手術が認められ」と語られるが、英国ではまだ同性愛そのものが法に触れる時代であった。

まず丁寧な時代のデイティール描写に目が行く。遠目にかしずいている傷痍軍人。画面の奥に止まっている古い車。セロハンで口を覆った牛乳瓶、その蓋を開ける針のついた器具。美術部の仕事ぶりが素晴らしい(小坂健太郎)。

キャスティングトランスジェンダー当事者を探しあて、見事にキャラクターを屹立させている。巧いとか下手とか、そんな技術的なことではない存在そのものを捉える演出と撮影に感心する。

 体は男で心は女、だから手術で女になった、主張に対し検事(安井順平)は訊く。「メンスはあるのか」と。サチ(中川未悠)の最終弁論はこれに答える。男でも女でもないと。断じてそれを認めない検事が弁護士(錦戸亮)に自分の戦争体験を話す。

このエピソードを思い出した。

togetter.com

 弁護士は憲法の条文「幸福の追求」に照らし合わすが、裁判の結末は苦い。

まだ男の役目女の役目が明確に分けられていた時代、どんなにか女性上位を謳っても建前に過ぎない時代。男でも女でもないというカテゴライズには至らない。

他者を認めることで自分を意識する。日本に限らず世界中が分断の時代の今、観て知って、考えるべき映画だと思う。

佳作、お勧め。