本当にここまで黒沢監督の「好きなもの」を詰め込んで一本の映画として創り上げる事ができた、というベテラン映画監督としての「幸せのかたち」を堪能する。
後半の廃工場で銃撃戦、を如何にスタイリッシュに撮るか、というところから逆算したような脚本。こういう逆算型は大抵どこか無理筋を内包してしまうものなのだが、警察とヤクザを出さない事で成立させたところは秀逸。
あれだけ本邦に拳銃が溢れかえっているのは如何なものかと思わなくもないが、だがそれさえも世界的巨匠になっても未だ学生映画のノリを持ち込んでいるようで、どうでもよいくらいに喜ばしい。
コンクリートの崩れたような障壁、嬉々として作ったんだろうなぁと想像。あれを盾にしての銃撃戦、マカロニウェスタンだ。
そして突然の横殴りの降雪、映画の神に祝福されたかの様である。
Facebookにエランというモデルガンメーカーの社長さんがブログを綴っていて、黒沢清監督が時折来店する、と書いている。そういう「好きもん」なところも本作に横溢していて幸福感が漲っている。
相変わらず「シンドラーのリスト」('93)由来のワンカット銃殺やら「暗殺の森」('70)のような森の疾走やらも喜ばしい、羨ましい。
いゃあ映画ってほんっとーにいいですね、と長年映画を見続けた果てにごく稀に出会うこうした「幸せのかたち」に暫しニヤつきが止まらなかった。