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「ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男」監督トッド・ヘインズ at 大阪ステーションシネマ

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 デュポン社による水質汚染事件を描く。デュポン、といえば「フォックス・キャッチャー」(2015)という悍ましい映画があった。

「フォックスキャッチャー」監督ベネット・ミラー at シネリーブル神戸 - 映画的日乗

 これに出ていたのが本作「ダーク・ウォーターズ」の製作兼主演のマーク・ラファロ。デュポンの御曹司に殺される役だった。本作のプロデューサーを兼任してまで製作したのはこの時既にデュポン社という歪な組織に興味を持っていたのだろうと想像する。

 冒頭は1975年。ウェストヴァージニア、田舎町のある池に飛び込む若者達。侵入禁止区域ですぐに追い出される。追い出した男達は池に何やら液体を噴霧する。

 時代は20年後に飛んで、デュポン社による水質汚染が原因で牛が死んでいく、と訴える農場主がオハイオのある法律事務所に現れる。応対した弁護士ビロット(マーク・ラファロ)の故郷がその町。祖母がまだ住んでいる。

 法律事務所は企業の法律顧問が業務。ビロットは宇陀津が上がらない弁護士だが、故郷の名もなき人々の為にデュポン社を追求して行く。

 個人対大企業。マイケル・マンの「インサイダー」('99)をすぐに想起したが、本作のタッチはウォーターゲート事件を追求した新聞記者を描く「大統領の陰謀」('76)を彷彿とさせる。淡々と膨大な資料を読み込んでエビデンスを積み重ねるビロット。

 いよいよ訴追に踏み切る際の法律事務所のディスカッション。新米弁護士がビロットに「賠償金目当て」だと揶揄すると上司のトム(ティム・ロビンス)が一喝する。

 これは企業による犯罪であると。新米の当事者意識の欠如を突くティム・ロビンス、圧倒的な演技で全部持って行く瞬間だった。

 が、事は単純ではない。デュポン社が今も「のうのうと」存在している企業である事からして、彼等の追求は決して勝利した訳ではない。これはアメリカ版の「水俣」でもある。

 エンディングにジョニー・キャッシュの"I Won't Back Down" 私は退かない。つまり、まだ終わらない。

I Won't Back Down

I Won't Back Down

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 なお、2019年11月、本作が全米公開された際、デュポン社の株価が下落したそうである。佳作、お勧め。