ドイツ語の原題は"Führer und Verführer"、直訳すると「指導者と煽動者」。
邦題の副題は本編を観終わると間違っていると思う。ゲッベルスはヒトラーをプロデュースするような高見に位置しない。妄信的に追随しているだけで、演説の巧さはむしろヒトラー由来だろう。
およそ映画的ではない、事実の羅列を説明的に時系列で描く。
NHKの「映像の世紀」に再現ドラマを挟む構成と言うと言い過ぎかも知れないが、時折挟まれるドキュメンタリー映像もかの番組を含め、見たことのあるものが殆どだ。ただ冒頭のゲッペルス一家の遺体は初めて見たような気がする。とは言えユダヤ人虐殺や、フランスの村人を処刑する映像を大きなスクリーンで観ると残虐性と嫌悪感がいや増す。
気になって仕方がなかったのはゲッベルスを演じるロベルト・シュタットローバーのカツラなのか植毛なのか分からないが髪の生え際が不自然なこと。しかしあらためてネットで画像検索してみると実際のゲッベルスもカツラを被っているように見えなくもない。
映画はモノマネショーではないが、ヒトラーもヒムラーもどうもピンと来ない配役。
そして全体にロケ部分はチープな印象。1942年のヴァルキューレ作戦はサラッと触れる程度、ヴァンゼー会議は台詞だけで語られる。
1945年4月、ベルリンの総統地下壕の様子も「最期の12日間」(2004)に比べるべくもない。
やはりブルーノ・ガンツは偉大だ。
映画を見過ぎているからか、結果は知識のおさらいになってしまった。
ゲッベルスの来し方は分かっても、その人物形成要素はよく分からないままだ。
ここではひたすらな直情径行に過ぎない。
「関心領域」(2023)のルドルフ・ヘスの方がまだ内心が垣間見える描写があった。
ただ残虐な映像も含めドイツ人が「加害者の歴史を伝える責任」を有りのままに送り届ける事は意義深い。
事実への耐性に劣る幼稚な国の(一部の)民ほど歴史を歪曲し都合よく被害者ヅラをするからね。


