Heldin | Trailer Deutsch | Film | critic.de
かつて同タイトルの日本映画があったが、本作の原題はドイツ語タイトルは"Helden"つまりヒロイン、英語タイトルは"Late Shift"、つまり遅番である。
どのタイトルも本作を構成する要素に含まれているといえよう。
エンドロールのことを先に書くが、そこにはスイスのみならず世界的に看護師が不足しているテータが示されていた。
ついひと月前に患者という立場で看護師の日常を見ていた私にとって、本作の臨場感はただ事ではなかった。
ひっきりなしに鳴る首から下げた携帯電話、あれは私もずっと目撃していた。そしてこれもなり続けるナースコール。本作でもそうだが私が入院している間でも「ちょっと来て」と同じ人がひっきりなしに何度も鳴らしていた。
スイスも日本も同じ状況だと思う。日本とちょっと違うのは患者の親族から直接ナースの携帯に電話がかけられる点だ。もしかしたら重篤患者の親族だけなのかも知れないが。
冒頭の看護師の「申し送り」事項がストーリーの伏線となっていて、92分の上映時間の間に全てが回収される。
早く終わって欲しい、と願う映画だ。退屈だからではない。途切れることのない緊張感とひたすら患者の「言い分」を呑まざるを得ないストレスに観ている側も同化してしまうからだ。ヒロインたるフロリア(レオニー・ベネシュ、素晴らしい)を一刻も早く休ませてあげて欲しいと願うのだ。
そのフロリアは時折笑顔を見せ、子供にキャンディを配り、決して暗い顔をしない。
一貫して人間の尊厳に向き合い、ブレない。もう余命が分かっている患者に「頑張れ」とも「大丈夫」とも言わない。黙って手を握る。
しかし後半、彼女が遂にキレてしまう時がある。
嫌味な患者に対する納得のキレっぷりなのだが、脚本も兼任のフォルぺ監督はここから二枚腰とも言うべき見せ方をする。
フロリアの尊厳を守る姿勢は等しく患者に伝わっていたのだ。もうここからが見事で、ラストに至ってリアリズムからシュールへと昇華する崇高とも言える映画的純度の高さに「やられた」と脱帽した。
本年暫定ベスト、厳しくそして優しい傑作、お勧め。
どうやって撮影したのか知りたくて久しぶりにパンフレットを買った。
平日昼間なのに満席近い。知っている人は知っているということか。