ソウルの国際空港が幕開け。
不審な言動、行動の男(イム・シワン)はトイレで自ら外科手術を行い体内に金属カプセルを仕掛ける。ホノルルに向かう国際線に乗ろうとする人々の点描があり、カプセルの男は出発直前のホノルル行きのチケットを片道だけ買う。一方、ソウル市警のク刑事(ソン・ガンホ)はあるマンションでの猟奇殺人の現場に行き着く。やがて飛び立った飛行機内で発生するバイオテロ事件。ク刑事の妻もそこに乗り合わせていた。テロを起こした犯人はカプセルの男、リュ・ジンソク。経歴はすぐに割れるが、自らも殺人ウイルスに感染して死ぬ。やがて機内では次々に酷い高熱にうなされる人々が。
かつて「カサンドラ・クロス」('76)というヨーロッパの列車内で起きるバイオテロの映画があり、エボラ出血熱のパンデミックを描いた「アウトブレイク」('95)というのもあった。
本作は飛んでいる飛行機内という点で上記二作品に比べて密室性が高い。当時のオールスターキャストだった「カサンドラ・クロス」が牧歌的にすらみえる。そういえば航空パニック映画「大空港」のシリーズもあったな。
これから観る人の為にネタバレは慎むがキャラクターに仕掛けられている伏線の絡み合いが巧妙な部分と荒い部分がある。
カプセル男の外科手術もトイレでやらずにもっと前からやっとけばとか、機内で切開した後の止血はあんなもんじゃダメだろうとか、キャラクターによって発症の早い遅いがあったりと作劇上のご都合も感じる。
が、しかし。乗客の希望と絶望をしつこく繰り返す脚本に画が負けていない。戦闘機とのチェイス、韓国政府の司令部の緊迫など毎度のことながら日本映画が百年かかっても追いつけない描写は見事。大体このテーマでは空港滑走路のロケも市中のカーチェイスも日本では不許可。
これは観る劇場を選ぶ作品だろう。出来るだけ大きなスクリーンで観る事をお勧めするし、恐らく世界中の航空会社は本作を機内サービス放送に選ばないと思うが、飛行機内で観たら体調不良になる事間違いなし。ドビッシー「月の光」が効果的でセンスが良い選曲。役者は全員素晴らしい。
あっぱれ、お勧め。