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「パーフェクト・ケア」監督J・ブレイクソン at 神戸国際松竹

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  原題は"I Care a Lot" 「私がお世話します」ってとこか。

007は二度死ぬ」('67)の原題は"You Only Live Twice"、これは"You Only Live Once"(人生は一度きり)のモジリで邦題の「二度死ぬ」はその通り。何が言いたいかと言うと本作「パーフェクト・ケア」の主要登場人物は皆一度死んでいる、あるいは死んだことになっている。

 森と都市が共存しているような街並み、IMDbによるとロケ地はボストン。

 フィルターワークを駆使した色味がかったルック、清潔感が溢れているロケーションの裏でドス黒い拝金主義が描かれるというシニカルな演出。

 胸糞悪い女を演じさせたら当代随一だろう、ロザムンド・パイク。彼女が演じるマーラは認知症などでケアが必要な老人の法定後見人。息のかかった医師に出鱈目な診断書を書かせ、一切の生命倫理を顧みず半ば勝手に後見人になってこれまた息のかかった老人ホームに送り込む。一旦ここに入った老人は死ぬまで出られない。

 合法後妻業、後妻屋だ。マーラと同性のパートナー(後に元警官と分かる)フラン(エイザ・ゴンザレス)がとっとと老人達の財産を巻き上げる。

 が、カモだと思ってかっさらった老人ジェニファー(ダイアン・ウィースト)が、タダもんじゃなかった事から物語が転がる。

 善人そうなジェニファーがガラッと品性を物語るようなゲスい顔に変貌するスリルにゾクゾクする。ダイアン・ウィースト、惚れ惚れする凄み、圧倒的な名演。

 対するロザムンド・パイクは「絶対負けない」と言い放ち、追手のロシアン・マフィアと渡り合う。このロシアン・マフィアが揃って頭悪いのが残念。組織の弁護士も二流。恐ろしく残忍でも良かったのにヘッポコばかり。

 予測不能な脚本はいっ時もテンションが下がらない疾走感。


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               【ここからネタバレ】

 マーラもフランも一度死ぬ。いや死にかけるが生き抜く。そして勝つ、勝ってしまう。

 しかし、神の摂理に反した行為は必ずや罰を受けるのがアメリカ映画の鉄の掟。巨万の富を手にした彼女達に下される神の審判。制作陣が考え抜いたであろうこのラストは私の観ている間に想像していた「希望的予測」と違っていた。

 ジェニファーがマーラに不意にかますヘッドロック、あれをもう一度見たかった。だって彼女はマーラを許していないだろうから。

  とまれ、一級の面白さ、お見事。