「 1975年のケルン・コンサート 」公式サイト 4.10(金)全国公開
1975年のキース・ジャレットによるケルン・コンサートは今でも聴ける。
このコンサートを実現させたドイツの女性ヴェラ・ブランデスの物語。
冒頭、50歳のヴェラ(スザンヌ・ヴォルフ)のホームパーティ、父親との確執を匂わせて、物語は一気に34年前に遡る。
生意気を絵に描いたような16歳のヴェラ(マラ・エムデ、素敵や)はクラブでジャズにのめり込み、自己顕示欲を撒き散らしてジャズ・ライブのプロモートを始める。戦後の焦土と化した国(西ドイツ)から叩き上げた歯科医であるヴェラの父親は娘の突飛な行動を激しく諌める。引きこもりの兄とも罵り合い、彼女は家に戻らず事務所を借りて寝泊まり、男出入りも激しい。
ヴェラはキース・ジャレットの音楽と出会うことで「自分のやるべきこと」を見出す。
ヴェラの彼氏(マイケル・チャーナス)によるジャズの歴史とそこから突然変異したキースについての解説が的確で分かりやすい。
猪突猛進、劇場補償費を借りに反目しているはずの父親に頭を下げに行くが返り討ちにあう。次から次へと難題が降りかかるが「何者かになる」という自己実現のエネルギーは美しい。独りよがりの思い込みこそが青春なのだ。
どんでん返しもあった末のケルン・コンサート開演、キース・ジャレットの一音目を聴かせずにイド・フルーク監督はニーナ・シモンの"To Love Somebody"を被せる。
記事によるとキースの音源が使えなかったかららしいが、この曲は結局家族の力を借りてコンサートを実現できたヴェラの心情そのものだろう。
大成功のコンサート、しかしそこから「32年後」に戻るラストはほろ苦い。父と娘の間に目に見えない「戦後ドイツ」が横たわっている。
月曜昼間の劇場、ほぼ満席。50年前の10代、20代の皆さんか。あの頃の若者は今よりずっとタフだった。なんて言うと歳をとったということか。
佳作、お勧め。
