www.kusanohibiki.com 佐藤泰志原作、函館ロケのシリーズ5作目。
プロデュースが同じでスタッフが毎回変わる。今回は斎藤久志監督、脚本も多数書いている人だが今回は監督のみで脚本は斎藤監督の弟子筋のような人。
冒頭の疾走するスケートボードを追うカットに魅入られる。作品全体がこのカットに象徴されるように走っている。人が走り、スケボーが走り、車が走る。
時に、走る主人公・和雄(東出昌大)とスケボーの高校年達がシンクロする。
青春という言葉の定義は人それぞれだろうが、ここ函館という街で時間とエネルギーを持て余している青春の只中の高校年達と、青春の成れの果てのような主人公が過去と現在のように変わり番子に示される。
主人公の親友のような研二(大東駿介)もまた平凡な英語教師である事に諦観を滲ませている。
高校生達が常に持ち運んでいる大きな木切は、差し詰め彼らの未来を予見するモノリスか。
あの象徴的な木切れによって、高校生たちと和雄とその妻(奈緒)、そして研二には直接的な関係性はないものの、「今とその成れの果て」に見えて仕方がない。ラストもそれを暗示しているように見える。
和雄と別れる決意をした妻は黙って家を出たのか、夫・和雄と話し合って家を出たのかが曖昧だ。
夫婦話し合って妻は家を出たが、病のせいで意識が混濁している和雄が妻に「うちに帰ったら云々」と電話(留守電に録音)をした、私はそう解釈したが。
惜しいのは妻が見たキタキツネ。妻の入れ込みでみたかった。予算だろう。身に沁みて分かる。
ポスターにPG12とあり、どんな性的表現があるのだろうと思って観ていたが、皆無だった。「映画芸術」秋号の斎藤監督インタビューによると和雄が吸っている煙草を未成年の高校生に手渡して吸わせたシーンが引っかかったらしい。
私の「She's Rain」は高校生がビールを呑むシーンが何シーンもあるが、えらい時代になったものだ。