私の2017年の作品「ママ、ごはんまだ?」は台南市から助成金が出ていて、ロケでは大変お世話になった。当時の市長、賴清德氏は現台湾総統である。
なので、台南市には格別の思い入れがあり、畏兄今関あきよし監督が台南で撮ったこの作品は是非観なければと舞台挨拶の日に駆けつける。
全美戯院は私も何度か訪れていたが、チケットを買って映画を観た事はなかった。

開巻、今関監督の盟友である三留まゆみが、通訳の人と共に、チケットを買って劇場に入って行く。このチケットが私の高校時代、つまり45年前くらいに日本の映画館で発行していたものと似ているのでもうそれだけで郷愁に浸れる。
台南には、日本がこの50年で失ったものがまだ沢山残っている。だから観ている間じゅうすぐにでも台南に飛んでいきたいとの渇望感が止まらなかった。
映画館の看板絵師というのは絶滅危機職種だ。
全美戯院専属の絵師、顔振發氏のインタビューと、現在の仕事ぶりが描かれる。
インタビュアーの三留さんの質問に淡々と、特に驚くような経歴は語らない顔さん。
一方、目分量で巨大な「スラムダンク」の看板を仕上げて行く仕事ぶりに驚嘆させられる。
漢字の国ではあるが、あの文字の正確な書きっぷりは敬服する。
映画館の経営と相俟って、この継承困難な看板絵師の未来は拓けているものではない。今関監督がいま記録しなければ、と使命感を持ってキャメラを向けたのだと思う。
上映後は今関監督と共になにわの看板絵師、八条祥治氏が登壇、全美戯院と同じく、幸先宜しくないと語っていた。
映画はたかが130年の歴史しかない。他の芸術に比べると歴史は浅い。
その形態の変化はまだまだ続くであろう。時代に抗うというより、いつかは朽ち果てるまでこのままで行く、というその姿は、歳を重ねた人間の生き方に重なる。
