映画『ミューズは溺れない』🕊 (@musehaoborenai) / Twitter
海に面した町、高校の美術の授業から始まる。
校外写生、スケッチをしている高校生の人間関係の始まりが視線とその距離だけで表現される緊張感。一人の生徒が不意に海に突き飛ばされる事で物語が動くスピード感。
突き飛ばされた朔子(上原実矩)を描いた光(若杉凩)のオーラが際立つ。光の凛とした自信家の理知的な言葉の連射を打ち砕く一瞬、朔子「私、あなたの絵が好き」。ここでこの映画は勝った。
朔子の父の再婚、継母の妊娠、家の立ち退きによる引越し。高校三年生の将来の進路。少し前までの凪のような日常にさざなみが起こり、そこに同性の恋。言い知れぬ心の揺れを丹念かつ簡潔なカットで捉えていく。彼女らの目の前の相手に言葉で掴み掛からんとする、つくり手の硬質な若さが台詞の端々に顕れている。
本作の前に見た「やまぶき」で警察官でありながらリベラルな側面を持つ父娘家庭の父を演じていた川瀬陽太がここでは明るい気の良いお父さん。両作は全く関係ないとはいえギャップが可笑しい。後妻の広澤草のキャミソールから露わになっている背中の艶かしさ。夜の学校、ちょっと「台風クラブ」('85)の匂いがする。
ラスト、朔子と光は方舟と共に大海へと躍り出る。眩し過ぎるくらいのポジティブに面食らうが、ネガティブに深みに嵌ってしまう方が安易な展開かも知れない。
淺雄監督、上映後の質疑応答。
朔子のキャラクターは監督自身が投影されていることがよく分かった。
#ミューズは溺れない の上映が始まるのを待っている。換気の為に少し開いた劇場のドアから「まさか化粧するんじゃないだろうな」と台詞が漏れて来た。#家族ゲーム やってるんだ pic.twitter.com/wshtFdEa4I
— 白羽弥仁 (@makemydmitts11) 2022年11月19日