映画和日乗

映画、食、人。西に東に。

映画「道草キッチン」2025年11月公開  

「夏の砂の上」監督・玉田真也 at 宝塚シネ・ピピア

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 主演オダギリジョーがプロデューサーも兼任。豪華キャストはそれ故なのか。

人と人の関係は、近づけば近づくほど複雑になる。利害と愛憎の濃度が上がっていく。

事故で子供を失った小浦(オダギリジョー)は失業中。妻(松たか子)は恐らく子供の事故以来だと想像されるが、家を出ている。

小浦の妹(満島ひかり)が突然やって来て、娘の優子(高石あかり)を預かってくれと半ば捨て置くようにして帰って行く。

親族という濃密な関係性が冒頭一気に描かれ、次に小浦の元の職場の仲間(三石研)や同窓生の集まりやら小浦の妻の今の交際相手(森山直太朗)やらと地方の町特有の人間関係の近さが示される。小浦はそれらをやり過ごすかのように漂う。

真夏の断水、風呂は一体どうなっているのかと思ったがそこはスルーされ、そういうことではなく彼らの心の渇きと重ね合わされる。

造船所で溶接工をやっていたらしい小浦の仕事への渇望、脳裏に貼り付いて取れない失った子供への自責の念。

優子は母親に捨て置かれていることを自覚していて、その愛への渇望の裏返しでバイト先の男と寝る。そこには愛情はない。

やっと大雨が降り、たらいに溜めた雨水を飲む優子、続いて小浦も。それは二人の心の渇きへの一滴なのだろう。優子は結局母が引き取りに来る。

 小浦は友を失い、元妻を失い、二度と溶接工に戻れないであろう事故に遭うことで希望も失う。元妻への心の平衡を失ったような言葉は、決して戻ることのない帰らざる日々への渇望であろう。

それでもいつものように煙草屋でタバコを一つ買う男。だからどうなんだ、と思いつつ私もまた空から降る一滴を待っていることを衝かれたような気がした。