映画和日乗

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「プロミシング・ヤング・ウーマン」監督エメラルド・フェネル at 神戸国際松竹

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 今年のオスカーオリジナル脚本賞受賞。むべなるかなの秀逸なホン。

 Promising Young Woman とは「将来が約束された若く有望な女性」という意味とのこと。

 妙な明るさに彩られたコーヒーショップ、あまりキャメラは動かない。フィックスのツーショット。勤労意欲ゼロのカサンドラ(ケリー・マリガン)。

 30歳手前で両親と自宅暮らし。医学部中退。夜な夜なクラブに出没して「自警活動」に勤しむ。親には「店の棚卸し」と嘘をついて。

 カサンドラの大学同期生ライアン(ボー・バーナム)との再会。

   ライアンから別の同期生の結婚を知らされるカサンドラ

 ズーンと腹に響くようなドルビーアトモスの重低音がシグナルとなってカサンドラは「行動」を開始する。「行動」とはある事件の加害者とそれに加担した連中への復讐。

 カサンドラの女性のパートナーが酒を飲まされてレイプされた過去。パートナーは加害者側の弁護士にやり込められ、また大学側の不誠実な対応を苦に自殺する。

 男は全てバカでエロい事しか考えていなくて無責任、と女性監督が「女性側」から描くと毎度そうなってしまうキライがあり、今作も先般観た「17歳の瞳に映る世界」と同じ視点である。

 が、エメラルド・フェネル監督はかなり捻りを効かせる。優しくて誠実な男の前には無力になってしまう乙女ゴゴロを繊細に描く。ドラッグ・ストアで戯れあうカサンドラとライアンの、ひと昔前の浮かれたラブストーリー風の編集はパロディめいていて「このままで終わる訳が無い」展開の予兆となっていて秀逸。

 その予兆は見事な「どんでん返し」となり、更にこの後が予測不能の展開。これから観る方の為に書かないが、ラストの"Angel Of The Morning"に鳥肌が立つ。

 エンドクレジットが始まって拍手したのはいつ以来か。撮影、編集、音楽見事。今年度暫定一位の快作、お勧め。あの重低音は劇場で観ないと損。必見。