三姉妹、それぞれの家族に向かうはずの愛のベクトルが違う方向に向けられている。 長女ヒスク(キム・ソニョン)は常に卑屈で娘の言いなり、次女ミヨン(ムン・ソリ、凄まじい好演)はキリスト教から派生した韓国独自の宗派に傾倒、三女ミオク(チャン・ユンジュ)はスナック菓子と焼酎が手放せず、夫に当たり散らす。
何故かくもズレでいるのか、ヒスクの娘のBFに対する不可解な行動、ミヨンの本心を顕にしない建前主義、不意の暴力。ミオクは相手構わず毒づくコミュニケーション障害。これらの衝動の起因が後半、彼女らの帰郷によって明かされる構成の巧さに唸る。ただそこに至るまで明かされざる物語を「待つ」のにはちょっとした忍耐が要求される。
その明かされざる物語。崔洋一監督によって映画化もされた梁石日「血と骨」に描かれた朝鮮半島独特のモンスター的家父長がここにもいた。恐らく儒教的価値観の支配下に於いては珍しくない人物像なのであろう。
奇しくも「宗教二世」なる単語が飛び交う今日、ミヨンはそれに当たり、ミヨンの子供達は三世として既にここに苦悩している。また気の弱いヒスクが勧誘されるままに連れて行かれる「教会」はあの教会を彷彿とさせる。
彷徨う彼女達の悲痛な泥臭さは清潔キラキラな韓流ドラマを撃つ。あんた達、本当はこうだろう、と。
ラストに至って、それぞれてんでの方向を向いていた愛のベクトルが内なる家族へと向く。最後のロングショット、巧いなと心の中で快哉を叫ぶ。
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