映画和日乗

映画、食、人。西に東に。

映画「道草キッチン」2025年11月公開  

「旅と日々」監督・三宅唱 at シネリーブル神戸

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 エンドロールによると出資社4社、そして文化庁補助金。制作費は想像がつく。ベストワン監督でもこんなに倹しい規模なのか。

そこで選ばれたのはつげ義春。その原作は未読だが山下敦弘監督「リアリズムの宿」(2003)が同じ原作者だったなと思い出す。本作となんとなくテイストが似ている。

 

 

風景、自然にどっぷり身を置く人物。前半の台風は恐らく台風を待っての撮影だろう。後半の雪景色もまたその季節を待ったのであろう。そういう意味では豊かな映画ではある。

特段何かが劇的に動き出す話ではない。それはそれで素敵な時間の流れでもある。

シム・ウンギョンの翻訳口調の台詞も確信犯で、韓国語のナレーションを字幕にするのも画面構成に織り込み済みであろう、字体も含めて精緻にデザインされている。

当主と客が同じ空間で寝泊まりする民宿をあり得ないと断じる向きもあるが原作通りなのか、シュールをそのまま呑み込んでいる。入浴はどうしていたのであろう‥‥それはリアリズムか。

前半の映画内映画の中に、夕方から夜に暮れなずんで行く風景をライトを当てずに本当に暗くなるまで捉え、その中で人物が延々と会話をしている1カットがある。

この見ずらいカットがリアリズムであり、映画内映画が終わってからの東北の民宿がシュールであるという倒置は謎めいていて面白い。

冷凍の錦鯉もまた微かに面白かった。

韓国の水墨画を眺めているような映画だった。