映画的日乗

映画、食、人。西に東に。

「新 感染 ファイナルエクスプレス」監督ヨン・カンホ at 神戸国際松竹

shin-kansen.com新幹線大爆破」('75)の犯人がゾンビの大群だったら、いや単純にそうはくくれないモチーフだがノンストップ、これでもかと繰り出す危機の連続に父娘愛、夫婦愛を差し込んだ見事過ぎてあざとくてもOKな伏線。キャラクターの描き分けもしっかりしているし、天才的な子役にも感服。そして観ている途中から気がつく北朝鮮との関係。必死の思いでゾンビから逃げてきた人々を「感染している」と隔離するくだりは脱北者の扱いのメタファーだろうし、離れ離れになってしまった姉妹が壮絶な最期を遂げる、あの妹の台詞は南北離散家族の悲劇を想起するのが自然だろう。結局いかなるウィルス感染によってこんなことになっちゃうのかはよく分からないがどうでも良いくらい針の振り切れたテンション。
てんこ盛りゲップが出るほどの詰め込みようだが、チープなCGで地球の危機を描く我が国の映画に比べるとビジネスとしての映画製作の健全さは彼の国に軍配が上がらざるを得ない。まずJRではこの撮影は絶対無理! 傑作、お勧め。

「散歩する侵略者」監督・黒沢清 at 109シネマズHAT神戸

sanpo-movie.jp蝉の声がしきりにするのに冬のようなルック。登場人物の服装も季節を推し測れない。警察官のジャケットに静岡県警とあるが静岡なのかどこなのかは分からない。人間が信じ込んでいる概念を一瞬にして吸い取る宇宙人と称する連中。映画は開巻から既に季節や場所の概念を丁寧に消し去っている。

が、しかし地球人(というか悲しいことに全員日本人)と侵略者たる宇宙人の闘いは狭く、小さい範囲だ。この日本映画という概念は崩れない。

ゴッドファーザーPART II」('74)の、キューバ革命が起こった瞬間に大晦日のパーティ会場に隊列をなして踏み込んでくる軍隊とそっくりなシーンが出てくるが、あれがやりたかったんだろうな。軍隊を映す、ということを。勿論黒沢監督は政治的意味合いは限りなくゼロに近いと思われるが。

笹野高史、笑える官僚役。全体のルックといい映画技術論に徹している。パンデミックに冒された群衆、爆発や火炎と言ったCGが悲しい。この次に観た「新感染」と比べるとそれは火を見るより明らかである。