エンドロールに参考文献として挙げられている「狼煙を見よ」は随分以前に読んでいたが本編を見ている間に内容を思い出した。というか、本編前半部分の描写とほぼ一致していたと思う。
本作は爆破テロ事件後の桐島の日々が淡々と描かれる。三菱重工本社爆破事件には直接関わっていないとはいえ、工務店への出勤、勤務後の銭湯、ライブハウスでの一杯、淡い恋も仲間とのボーリングも加害意識が薄れてどこか幸せに見えてしまう危険を孕んでいる。むしろ工務店の同僚やアパートの隣人の奇人ぶりが客観的に描かれていて、可笑しい。
河島英五の「時代おくれ」が若い女性の歌声で何度かリフレインし、桐島本人の心情とシンクロする。が、どこかそれも美し過ぎる嫌いがある。
もう確信犯的に彼らとその世代に寄り添っているのが潔い。21世紀に入ってからの描写で世代間ギャップの代表のような若者が出て来て観る者の断絶感を煽る。
後半桐島が倒れて入院した後のエピソードでこのムカつく若者に「成長」を感じさせる描き方に安堵した。が、それも束の間'70sに「逆戻り」するラストを持って来る高橋伴明。師匠格の若松孝二が何度かやった「ラストはパレスチナと連帯」に寄り添う。