映画的日乗

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「ばるぼら」監督・手塚眞 at 宝塚シネ・ピピア

barbara-themovie.com 製作は2018年、公開が遅れたのはコロナ禍の影響ではなく芸能界の事情だと仄聞した。

 手塚監督は私より三歳上、大学在学中にキャンパスでお見かけする事はなかったが「星くず兄弟の伝説」('85)の撮影現場の様子は学生の間で話題だった。

 個人的にはその「星くず兄弟」以来の手塚作品である。'99の「白痴」は未見。

 親が原作で息子が監督って映画、世界にどれだけあるのだろう。咄嗟には思い出せない。膨大にある親の原作から息子が選んだ「ばるぼら」、資料によると'73年から'74年に描かれたものらしい。未読だが本編が始まってすぐ、原作を読んでから本作を観た方が分かり易いのだろうと思い至る。

 舞台は現代、池袋や新宿の典型的な雑踏の風景の中で'70年代のままのような佇まいのばるぼら(二階堂ふみ)と美倉(稲垣吾郎)は出逢い、漂う。

 手塚治虫の描く性的な匂いを漂わせる女性像を映像で表すのは暴挙を覚悟した蛮勇が求められる。これまでの実写映画化作品はどれひとつ成功していない。

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 本作でそれが成功しているのは片山萌美演じる前半に出て来るディスプレイのマネキンの化身だけだと思う。片山のフォルムの勝利。

 ラストの唐突な屍姦についてはキネマ旬報11月下旬号の夏目房之介氏の評論を読んで納得。いや、映画としては納得行かないが。神代辰巳なら、清順ならどう演出しただろう、そう思いながら眺めた。

 

 

 

「キング・オブ・シーヴズ」監督ジェームズ・マーシュ at シネリーブル神戸

www.imdb.comまずはこの記事を。

news.yahoo.co.jp本作はこの事件の映画化。

マイケル・ケインは御歳78歳だがこの映画がつくられたのは3年前の2018年、彼は実際の事件を新聞記事で知って「この話が映画化されたら自分のところにオファーが来るかもと思ったが、その通りになった」と語っている。

www.youtube.comまた、似たような映画があったなと本作を観ている間中そのタイトルを思い出せなくてモヤモヤしていたが、それは「バンク・ジョブ」('09)だった。

「バンク・ジョブ」監督ロジャー・ドナルドソン at シネリーブル神戸 - 映画的日乗

奇しくも同じ映画館で観ている。

 観る前はイーストウッドの「スペース・カウボーイ」('00)のドロボー版かと思っていた。しかし泥棒仕事を粛々と進めるあたりまではジジイ達の「昔取った杵柄」なのだが何とリーダー格のブライアン(マイケル・ケイン)は現場で仲間のテリー(ジム・ブロードベント)と喧嘩、仕事を降りてしまう。

 体力の衰え、糖尿病、耳が遠いなどに加えて老人特有の融通の利かなさが露呈してしまう可笑しみと哀れ。

 どこかしら飄々としていたこの連中もその分け前をめぐっては生来のアウトレイジぶりが顔を出し、脅し、スカしで仲間割れ。監視カメラを気にしないハイテク音痴、思慮深さが無いので捕まるまでのサスペンスがイマイチ。

が、ラストの裁判に赴く犯人達の英国ダンディズムにはちょっと快哉

 また劇中彼らの若い頃の犯行がその出演作のフッテージで示される映画愛にもニヤリ。エンドロールでそれらの作品が表記されるがローリングが早過ぎて確認できなかったものの、マイケル・ケインのそれは「ミニミニ大作戦」('69)からだとのこと。

www.imdb.comそうかこの映画でも彼は金塊ドロボーだった!


 

「この世界に残されて」監督トート・バルナバーシュ at テアトル梅田

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 ハンガリー映画バルナバーシュ監督は'77年生まれながらキャリアは豊富、プロデューサーや俳優業もこなすようだ。彼のインタビューを読むとハンガリー映画は全て公的資金によって制作されるようだ。

 1948年のブダペスト。戦後三年、ある婦人科の病院から物語は始まる。

 初潮が来ない、という16歳のクララ(アビゲール・セーケ)を診察するアルド(ハイデュク・カーロイ)。饒舌に話すクララは孤児で、叔母に引き取られている。中年のアルドは一人で住んでいて、アルドに惹かれるクララは家を飛び出してアルドのアパートに入り込む。

 観ている間に徐々に二人がユダヤ人で、強制収容所の生き残りである事が分かってくる構成。その時代を回想シーンで説明しないところが秀逸。

むしろ家族がいた、平和な時代の幻想が描かれる。

 心身共に深く傷ついている二人。ナチスに家族を奪われ生き残ったものの今度はスターリンによって自由を奪われて行く。

 アルドのアパートにも光のないブダペストの街角にも植物のグリーンが無い。

色彩は常に薄く、彼らの心の有り様そのもののようで物悲しい。

 アルドの部屋で悪夢に苛まれるクララは収容所での悲惨な体験を語る。

 世間の誤解も気になるアルドは見合いのような出会いで伴侶を得る。彼もまた妻子をナチに殺されていた事を暗示するアルバムの写真が涙を誘う。クララは失恋するが、若者は立ち直りが早い。

 三年後、アルド夫妻と、同世代の青年と新婚のクララは再会。そこにスターリンの死を伝えるラジオ放送が流れる。微かな微笑みを湛えるアルド。

 この食事会の部屋に差す陽光の明るさ。

 そして仕事に向かうクララを乗せたバス、その窓外に流れる新緑。ここでようやくグリーン。ささやかな幸福と自由の象徴の色として使われていることが分かる。

 1948年の三年後は1951年。ハンガリー動乱はこの四年後の1956年。彼らの幸福と自由は果たして。

 

芦屋市役所

芦屋市役所にて本年最初の月イチ定例会議。

これまでの三年間で最も時間が長い会議だった。

ウイルス感染対策と様々なケースのシュミレーション。