映画的日乗

映画、食、人。西に東に。

「眉山」監督・犬童一心 at 東宝関西支社試写室。

さだまさしによる同名小説の映画化。
東京の旅行代理店で働く咲子(松嶋菜々子)は母親が倒れたとの知らせを受けて故郷徳島へと向かう。既に病院で意識のしっかりしている母親、龍子(宮本信子)は江戸弁のズバスバとした物言いで院内でひと波乱を起こしていた。叱られた医師(大沢たかお)は却って龍子に心酔し、同時に咲子とも魅かれ合う。が、龍子の余命はわずか。父親を知らない咲子と、そのことの全てを語らなかった龍子はどこか距離のある親子だったが、咲子はこれを期に父親の行方を探そうとする…というお話し。
この、どちらかというと平凡な物語の始まりを、これといって凝った風でもなく寧ろ説明過多な見せ方をしていく犬童演出に、このまま行くのか…と一抹の不安がよぎったが、一転、外出許可を受けて母娘が初めて向き合って食事をし、父親の行方と龍子の余命を問いつめ合うシーンから俄然冴えて来る。父親(夏八木勲)の営む東京の医院を訪ねる咲子、肝心な真相を何も語っていないのにお互いが親子であることを確信する一瞬の演出の巧さには感服した。
「総踊り」と称される全ての連による阿波踊りのクライマックス、遂に父と母は向き合う。試写室号泣の嵐だったが、これからご覧になる方、ここの宮本信子の手前で俯いている山田辰夫に注目を。本気で号泣しているように見えるのだ。阿波踊りは壮観、よくまあこれだけちゃんと撮影出来たものだ。素晴らしい。
宮本信子、「ひ」を「シ」と発音する江戸弁が、言い換えているだけのようで巧くいっていない、思えば本当の江戸弁役者がいないということなのだが。ラスト、突然出て来る河原崎健三は何だったのだろう、と気になる点もあるものの、エンターティンメントとして満足度は高い。お代は惜しくないのでは。5月12日公開。