映画的日乗

映画、食、人。西に東に。

「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」監督フィリダ・ロイド at TOHOシネマズ西宮OS

何が「涙」だこの邦題、原題が正解。
オープニングが巧い。雑貨店でミルクを買うサッチャー(メリル・ストリープ)、店主も他の客もみんな移民系、そして誰も彼女が元首相 The Iron Lady とは気がつかない。そんな現代のサッチャー認知症気味で(2012年現在86歳)、とっくに亡くなった夫デニス(ジム・ブロードベント)の幻影を追う。雑貨店の家庭に生まれ、英国特有のクラス意識に苛まれながらもそれこそ鉄の意志で保守党党首、そして首相へと上り詰めるサッチャー。その影にはいつも明るくいたずら好きな夫の姿があった。そんな彼女の一代記だが、首相在任中の10年の波乱万丈は脇に置かれ、現在の彼女の抱える孤独と病に重点が置かれている構成。歴史的描写はニュースリールで繋ぎ、劇中のロケは出来るだけ画を詰めてアップ乃至バストショットを多用、セット全体が映ることはあまりない。何が言いたいかと言うと、この映画お金がかけられなかったようだ。imdbの記録によると製作費は1,300万ドルとのこと。やはり近代史をきちんと描くには足りなかった、その苦心が映画全体に感じられる。しかしそれを補ってあまりあるのが「女優とは化けることなり」のメリル・ストリープの名演。ご存知のように本作でオスカー主演賞を獲得、この人以外あり得なかったかも知れない。
庶民出身を自認、自室の棚にはタンカレーフェイマス・グラウス、いずれも安酒。晩餐会でワインを断りウィスキーを所望する辺りが面白い。
双子の息子と娘の子供時代が出て来るが、長じてからは娘しか出て来ないのは不自然だと思っていたら、こういう事情があったのね。こっちの方も映画になりそうなお話し。


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