映画的日乗

映画、食、人。西に東に。

「葛城事件」監督・赤堀雅秋 at 新宿バルト9

本編冒頭「前夜の残り」だというデリバリーピザを食べる家族。以後、ラストに至るまでしばしば食事のシーンがありながら、母(南果歩)は一切料理を作らない。インスタント食品かコンビニ飯だ。一度だけ中華料理店に一家が赴くシーンがある。が、父の理不尽で箸をつけることのない彼ら。
それは「こうあらねばならない」と強迫観念的な家族像に縛られた父(三浦友和)への当てつけのようにも見える。その後一家は加速的に崩壊していく様が描かれて行く。
父の暴力から逃れた母と次男のアパート。長男が発見し、「早く逃げろ」と言うのに食べ物の話を続ける彼ら。しかし通報したのは長男だというアンビバレンツ。そこへ、コンビニの袋を提げてやって来る父。コンビニ袋で次男を叩き、首を絞める。長い1カットの間に日が翳って行く演出が秀逸。叩きつけたコンビニ袋から出てくるひしゃげたサンドウィッチ。父は呟く。「腹減った。伸子、何か作ってくれ」殴られても犯されそうになっても、それでも結局何かを作ることのない妻。
陰惨な話に異化効果を果たす弦楽重奏の劇伴が好い。ラストのミカンの木の顛末は展開が読めてしまった。役者は全員素晴らしい。


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