映画和日乗

映画、食、人。西に東に。

                         

「カーサ・エスペランサ 赤ちゃんたちの家」監督ジョン・セイルズ at シネリーブル神戸。

アメリカから、富裕層の女性6人が国境を越えてメキシコと思われる国のある町にやってくる。
物見遊山の見物、買い物、食事…しかし、彼女たちの真の目的は、
貧困により捨てられてしまった孤児を養子として引き取る為の順番待ちをすることだった。
6人の女性はそれぞれ心に傷を持ち、不妊症もいれば、流産や死産を繰り返してきた者もいる。
一方、貧しい町の人々は、養子縁組は「最大の輸出産業」と言い、カソリック教徒として
堕胎は拒否するが養育も拒否、という無責任な者もいる。日本版プレスシートの、
「女たちの心の声に共感の輪が広まっています」というコピーには反吐が出る思いだが、
アメリカン・インディーズのベテラン、セイルズ監督の視点はそんなところにはない。
彼女たちがどんなに傷を嘗め合おうとも、世界はあらかじめ矛盾に満ちていて、傷だろうが
悲しみだろうが、立場を変えれば全てがただの人間の欲望に過ぎない、ということである。
傷、でさえも「需要と供給」のマッチングで癒されてしまうのだ。ラスト、子供を
受け取る直前の女の一人がいう。「これであたしは生まれ変われるのね」。
いやいや、果たしてどうか。セイルズの描き方はそこを突き放してなかなかクールだ。