映画和日乗

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「親密すぎるうちあけ話」監督パトリス・ルコント at テアトル梅田

 パトリス・ルコントの2004年の作品。或るビルの6階、税理士のウィリアム(ファブリス・ルキーニ)のもとに相談に訪れる女(サンドリーヌ・ボネール)。
税金の相談ではなく、夫婦間の問題を滔々と話し出す。ウィリアムは、自分が別フロアの精神科医と間違えられている事に気づくが、それを黙ったまま二度も彼女をカウンセリングしてしまう。やがて自分が税理士であることを告白するも、彼女は構わず彼の事務所に来てはプライベートを話し続ける。そしてウィリアムは彼女に恋してしまうのだった…というお話し。
 「仕立て屋の恋」('89)、「髪結いの亭主」('90)、「イヴォンヌの香り」('93)「歓楽通り」('01)と、シチュエーションは違えども主役の男のキャラクターは一貫している。「惚れた女に手を出さず、じっと眺め、とことんつくすことで満足する」。多分にルコント本人の投影であることは確実だ。一歩間違えばストーカーなのだが、そこはフェアリー・テールとして美しく纏め上げてしまうところが一流監督。
今作においても、役者への的確な目配りと、現実感を周到に消しつつオトナのおとぎ話に昇華させる技量はお見事。一方、前作「列車に乗った男」('02)以来、どうもキャメラを振り回す嫌いがあり、その点は馴染めないが。セットデザイン、調度品の品の良さは流石。