映画和日乗

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「ヘンダーソン夫人の贈り物」監督スティーヴン・フリアーズ at シネカノン神戸

1937年のロンドン、インドとの貿易で財を成した会社社長が亡くなった。その未亡人、ヘンダーソン夫人(ジュディ・ディンチ)は莫大な遺産の一部を投じてある劇場を買い取る。支配人としてヴァンダム(ボブ・ホスキンス)を雇い入れレヴューを開幕するが、当初は流行ったものの人気はすぐに下降、ヘンダーソン夫人は起死回生、ヌードショーを企画する…というお話し。
その昔「額縁ショー」なるストリップの前身のような見せ物があったと仄聞していたが、これがその元祖のようだ。絵画のように人物が動いていないから猥褻ではなく芸術である、というへ理屈で検閲を免れるという訳だ。冒頭、夫を亡くして気丈に振る舞うも、ひとり湖にボートを漕ぎ出してさめざめと泣く、というセンスの良いカットから、フリアーズ監督の身に染み込んでいる英国趣味が横溢していて心地が良い。一方、あの時代のユダヤ人差別の凄まじさも語りつつ、ユダヤ教の割礼の風習をギャグと伏線に盛り込む粋も素敵だ。戦争が激しくなり、劇場の閉鎖を迫る政府高官相手に、自らの経験(これもちゃんと伏線がある)を基に一席ぶつヘンダーソン夫人の語りにグッと来てしまう。ことほど左様に名優ジュディ・ディンチの独壇場の映画でもあり、プロデューサーを兼任したボブ・ホスキンスはアクを押さえてディンチを支えている。ラストのこの二人のダンスも粋です。特筆すべきは大好きだった「スパニッシュ・アパートメント」('02)「ロシアン・ドールズ」('05)に出てたケリー・ライリーがヌードダンサー役、化けるなぁ、凄い女優魂
笑って泣かせてセンス抜群お勧め小品佳作。