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「ダークナイト」監督クリストファー・ノーラン at 109シネマズHAT神戸

バットマン」シリーズ最新作、前作「バットマン・ビギンズ」('05)に引き続いてクリストファー・ノーランが監督…のみならず製作・脚本も兼任、つまり全権委任で臨んでいる。それだけにオープニング3分で最早ただならない撮影、編集の力技を見せつけ、以後2時間32分全く予断を許さないノンストップぶり。何といってもジョーカー(故ヒース・レジャー)のキャラクター造形が水際立っている。
「善」の権化であるデント(アーロン・エッカード)がコインの表裏で光と闇、善と悪の二分法を語るのをあざ笑いつつそれらのモラルを超越し、彼の「善」をも裏返してしまうジョーカーに、観る者をも「このまま屈せざるをえないのか」とまで追いつめる迫力ぶりはあっぱれ、お見事。
監督インタビューによると、病院爆破やトレーラーが縦にひっくり返るアクションはCGではなく実写だとか。流石に空を飛ぶバットマンまでは無理としても、随所にリアリズムぶりが顔を出す。その最たるものはジョーカーのメイク(一度だけ素顔見せる憎さ!)、嗚呼ヒース・レジャー、惜しい才能を亡くした。キャメラ、編集一流、ラストは拍手した。アメリカ映画今年随一の傑作、お勧め。