映画的日乗

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「キャデラック・レコード〜音楽でアメリカを変えた人々の物語〜」監督ダーネル・マーティン at シネリーブル神戸

1941年というから太平洋戦争開戦の年、シカゴでライブハウスを開いた野心家の男チェス(エイドリアン・ブロディ)と、ミシシッピーから出て来たギターの巧い黒人青年マディ(ジェフリー・ライト)が出会い、やがてチェスはレコード会社を設立する。その名はチェス・レコーズ。チェスは曲がヒットすると専属ミュージシャン達に高級車キャデラックをポンとプレゼントした。貧しかった彼らの憧れのクルマであり、まだその時代、黒人がキャデラックに乗ることは、経済的な理由のみならず、白人富裕層の象徴であったことから憚られていたのだった。戦後ハーモニカの名手、リトル(コロンバス・ショート)はマディとの共演でヒットを連発するが、リトルは、気の弱さと裏腹な衝動的暴力で身を持ち崩して行く。'50年代後半に入りテレビの普及と共にチャック・ベリー(モス・デフ)がスターダムに。マディの浪費もあり、チャックの稼ぎがキャデラック・レコーズを支えていた。そんな時、エタ・ジョーンズ(ビヨンセ・ノウルズ)がスカウトされる…というお話し。つまりアメリ音楽史そのものであり、ブルースからロックへ流れる時代の移り変わりが大変よく分かる。が、既にレイ・チャールズを描いた「レイ」('04)や「ドリーム・ガールズ」('06)で見ている、差別されていた黒人がサクセスし、やがて利権争いとドラッグ、そして暴力によって下降していく、というパターンはここでも踏襲されていて中盤から後半への展開の予測がつくと思いきや…ビヨンセの登場が一気に場をさらってしまうのだ。マーティン監督は、このビヨンセ演じるエタの過酷な人生と儚い恋をレコーディング・ルームの中だけで見事に表現している。歌いながら流す彼女の涙につられてしまうくらいだった。
とにかくビヨンセに尽きる、佳作お勧め。
蛇足だが、脚本も兼任のダーネル・マーティン監督、こんな美人(右はビヨンセ)。