白土三平の同名劇画の映画化。資料によると「スガルの島」という挿話が中心になっているらしい。
18世紀江戸時代、非差別出身のカムイ(松山ケンイチ)は忍者となるが組織を脱した抜け忍となったことで命を狙われる。逃走の道中、備中松山藩藩主の愛馬の足を切り持ち去る男・半兵衛(小林薫)と知り合う。半兵衛の住む村に匿われるカムイだが、そこで同じ抜け忍として嘗て闘ったことのあるスガル(小雪)と再会する。再び殺し合うことになる寸前、二人の恩人である半兵衛が逮捕される。カムイとスガルは共闘し処刑される寸前の半兵衛を救出、海上ルートで逃走するが、飲料水が尽き、這々の体のところを「渡り」なる鮫退治船の船長不動(伊藤英明)に助けられる。彼らはある島に上陸し、当初は平和に暮らすが…というお話し。
冒頭、白土三平の原画で始まる。咄嗟に同じ白土三平原作、大島渚監督「忍者武芸帳」('67)が喚起され、嘗て大島監督の助監督だった崔監督からの敬意を込めたオマージュに見えたのは私だけか。
どのカットにも気迫がみなぎり、ひたすらに走り続ける松山ケンイチ、それに負けず劣らず飛んで跳ねる小雪が肉体表現の限界まで挑戦していることが伝わって来て、見ているだけで緊張感と疲労感が乗り移る。別個の戦いがやがて共闘となり連帯へとつながる階級闘争は、原作の書かれた'60年代〜'70年代の息吹が底流に流れており、やがてそれが崩壊へと向かうこともあの時代とシンクロしている。この長大な原典、崔監督の「血と骨」('04)でもそうだったのだが、いち映画ファンとしては前後編で5時間くらいで見たかった。勿論それは無い物ねだり。行間を読むことで描かれていない部分を想像するとしよう。
とまれ、時計を気にすることはまずない、この秋最高のエンターティンメント大作、お勧め。
- 作者: 白土三平
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2009/08/28
- メディア: コミック
- 購入: 1人 クリック: 10回
- この商品を含むブログ (9件) を見る
夙川「フリゼーア小牧」でヘアカット。