映画和日乗

映画、食、人。西に東に。

                         

「第9地区」監督ニール・ブロムカンプ at 109シネマズHAT神戸

 南アフリカヨハネスブルグ。時代はいつなのか分からない。巨大な宇宙船が市中心部上空に停泊して20年。そこから地上に降りて来たエイリアン達が「第9地区」と呼ばれるスラムに隔離居住されている。彼等から武器を搾取するナイジェリア人ギャングが牛耳り、無政府状態。そこへ武器商社MNUがエイリアンの移住を計画。お調子者の現場担当チーフのヴィカス(シャルト・コプリー)は勇躍「第9地区」に入り込みエイリアン達に立ち退き交渉を始める。しかしある黒い液体を浴びてしまったヴィカスは片腕がエイリアン化してしまう。桁違いの破壊力を持つエイリアンの武器は、DNA判定によってしか作動しない。従って人間には使えないのだ。半エイリアンと化したヴィカスは既にDNAが武器に反応するようになっていた。それを知ったMNUは…というお話し。
 映画が始まって30秒ほどで既に巨大宇宙船がヨハネスブルグ上空に停泊しているという奇想天外なオープニング。TVドキュメンタリー風のインタビューと、二足歩行し英語を解するエイリアンがバラックに住んでいるという相反するシーンの応酬。ナチスに代表される民族浄化思想、南アフリカアパルトヘイト(ブロムカンプ監督は南ア出身)、あるいは9.11以後のアメリカの戦争のメタファーであることは明白で、素直に登場人物に感情移入はしにくい。そして「エイリアン」シリーズ、「スターシップ・トゥルーパーズ」シリーズ、「未知との遭遇」('77)などのSF映画へのオマージュというか剽窃もあからさま。「続・荒野の用心棒」('66)やら「片腕マシンガール」('07)への偏愛をも感じたのは私だけか。
何か全てがパロディのようで、政治的なメッセージ性は「あるようで、ない」と見た。

第9地区 [Blu-ray]

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