フェイスブックの創設者、マーク・ザッカーバーグの一代記"The Accidental Billionaires:The Founding Of Facebook"が原作。
キネマ旬報1月下旬号によると脚本を書いたアーロン・ソーキンは、ザッカーバーグや本作に登場する重要人物の誰一人取材が許されなかったそうだ。この映画はそれだけデリケートな「薮の中」が描かれている。
2003年のハーヴァード大学のキャンパス内パブから始まる。ザッカーバーグ(ジェシー・アイゼンバーグ)と、GFのエリカ(ルーニー・マラ)の口論が丹念に切り返したカットで進行して行く。全体のルックはフェイスブックのロゴデザインを思わせる空色ブルーだ。差別的、と断じるよりは「思ったことをそのまま言い過ぎる」ザッカーバーグはこと女性に限らず、他者を遠ざける性格。そんな彼が特権意識丸出しのウィンクルヴォス兄弟のグループからナンパ目的のSNSソフト開発を依頼される。が、すぐにその発展形を思いついたザッカーバーグは学内相互自己紹介サイトを開発。キャンパスメイトのエドゥアルド(アンドリュー・ガーフィールド)と共に「ザ・フェイスブック」を開発(後に"ザ"を取り払う)。ウィンクルヴォス側は激怒、訴訟へと発展するが西海岸のIT長者ショーン・パーカー(ジャスティン・ティンバーレイク)と組んだことで爆発的に増殖して行く。一方、エドゥアルドはそんな彼等から疎んじられ…というお話し。
IQの高い彼等の会話、そして起こされる複数の訴訟に於ける原告と被告のやりとり。若者はPCのキーを打ち込むが如くカタカタと猛スピードで話す。とりわけザッカーバーグの喋るスピードは映画全体のリズムの基調となっている一方、法廷闘争に於ける「旧世代」のリズムは遅い。ただ一人例外なのはハーヴァードの学長氏。本筋にあまり関係ないものの痛快だった。
派手に美しい映像は英国でのボートレースのシーンぐらいなのにセンス抜群の音楽の使い方が効果的でフェイスブックの増殖のスピードと同じく見ていて飽きることはない。コミュニケーションツールの開発に才能を発揮しながら、日本のどこかのIT長者と変わらない幼稚な遊びっぷりとのギャップ。クラブにガキっぽいパーティ、と結局は旧態依然なコミュニケーションの場が楽しい、というパラドックス。
冨は彼等を分裂させ、孤独のスピードも加速するという幼さ、脆さ。加えてそれでもやっぱりエリカちゃんのことが…となる「フツーの男のコ」ぶりは意外に普遍的。
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