映画和日乗

映画、食、人。西に東に。

                         

「イヴ・サンローラン」監督ピエール・トレトン at TOHOシネマズ六本木。

言わずと知れた世界的デザイナー、イヴ・サンローランの一代記。原題"L'amour Fou"とは「狂気の愛」の意。これはイヴの公私共にパートナーであったピエール・ベルジェとの関係を指すと共に、美というものへの飽くなき執着と愛をも示唆しているタイトルであろう。監督のピエール・トレトンは写真家出身。ベルジェの長大なインタビューの間に挟まれるイヴの肖像写真の素晴らしさには魅入ってしまう。そして圧倒的な審美眼、審美勘とも言える美術品のコレクションセンス、邸宅のデザイン。ミック・ジャガー、ビュッフェ、アンディ・ウォーホルとの交遊を示すフィルム。「人生で最も大切なことは自分自身と出会うこと」というイヴの言葉は、それが実現したことの幸運と、その為に走り続けなければならなかった重い運命を物語る。圧巻は1998年のフランスW杯セレモニーでのショー、そしてカトリーヌ・ドヌーヴの歌で始まるイヴ自身の引退セレモニー。ファッションは商業主義に成り下がった、と唾棄しモデル達は喪服、自身のロゴマークには祭壇のような白い花。
センス、センス、センス。全て圧倒的なセンスの良さ、全て詩のように聴こえる言葉、フランスそのもの。悪平等と幼稚なオタクの国は勝てない。
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