映画和日乗

映画、食、人。西に東に。

                         

「サウダーヂ」監督・富田克也 at 第七藝術劇場

山梨県甲府市が舞台。土方が中華屋で会話するシーンがオープニング。知り合って間もない二人が敬語で話し合う、まずここで日本映画に於いて久しく忘れていたリアリズムが喚起される。そうだよな、ああいう感じで話すのが自然だよな。素人が一所懸命に芝居しているという感じがしない、素人臭さを残しつつ形容し難い空気と体温が伝わって来る。こりゃ一体何なんだとヤラれる感じ。
延々と続く土方仕事、その中の一人はタイ人と日本人のハーフのホステスに入れあげ、もう一人はラッパーとしてライブハウスに立つ。両親は怠惰の限りを尽くし、ゴミ溜めのような部屋に精神を病んだ弟が佇む。ラッパーは昔の女にそそのかされてブラジル人ラッパーとジョイントするがウケず、ブラジル人達を恨む。不況で国に帰るかどうか悩むブラジル人コミュニティが描かれ、タイに憧れる土方はエステシャンの妻に愛想を尽かす…それぞれのシークエンスに「オチ」がないのは確信犯で、上映時間2時間47分の果て、投げ出すように終わる。しかし全く見ていて飽きない。予定調和がない、そうこの底知れぬ不景気と文化果つる街にそれがあったらおかしい、と言わんばかりで潔い。ラッパーと土方も結局、精神的にも肉体的にも接点がないままだ。その点は恐らく富田監督かなり模索した結果止めたのではないかと想像。BO∅WYのアレ、絶妙のタイミングでかかるあのシーン、撮りたいもの撮ってる感じが伝わって感動した。お勧め。

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