映画和日乗

映画、食、人。西に東に。

「ゴーン・ガール」監督デイヴィッド・フィンチャー at 109シネマズHAT神戸

バーでの何ということのないバーテン(女)と客(男)の会話から始まり(後にこの二人が双子の姉弟と判る)、男(ベン・アフレック)が帰宅すると自宅が荒らされている。何らかの事件によって男の妻(ロザムンド・パイク)が失踪した…にしては「ただならぬ雰囲気」ではないことに映画的既視感の反対、というかサスペンス映画の定石のような緊張感がない。この後夫ニックはしばしばお人好しな脇の甘さを露呈するのだが、前半に於いてフィンチャー監督は確信犯的に淡々と駒を進めて行く。しかしそのままで行くはずもなく、被害者は加害者として疑われ、行方不明者もまた果たして純然たる被害者なのかどうかが曖昧になって行く。ヒッチコックの「断崖」('41)、「めまい」('58)そして「サイコ」('60)の影響がちらつく。しかし親の理想としての子を演じ続ける余り、完璧な人生を歩まなければ気が済まない性格になってしまう、という人格破綻は現代の殺人事件に於ける犯行素因としてしばしば顕在化している。そしてアメリカ的なキリスト教保守派モラルに支えられた底の浅い正義を振りかざすメディアの病理も彼岸の出来事ではないという点で、本作はすこぶる現代的な社会の歪みが描かれている。が、幾通りも考えられたであろう結末は、果たしてあれで、どうなのか。


2014年観た映画は42本(うち旧作1本)。