ここに描かれている1931年の高校野球の如く、直球勝負の映画だ。外連味たっぷりの台湾流の演出も、照れのない直球に拍車をかける。「巨人の星」が高度経済成長期の日本と並走していたように、蒋介石国民党が渡って来る以前の、彼ら台湾人にとっても「建設的な時代」と嘉義農業の選手達が並走している。その象徴が八田與一であり、演じる大沢たかおは常に笑みを湛え、指導者然としていて周囲からの尊敬には一点の曇りもない。
全てが素直な人間性と善意に彩られ、登場する日本軍人もステレオタイプな粗暴さの微塵もない。日本人がこの豊かで素直な心をどこかに置き忘れたことを台湾映画に教えられた思いだ。