映画和日乗

映画、食、人。西に東に。

                         

「フォックスキャッチャー」監督ベネット・ミラー at シネリーブル神戸

カポーティ」('05)「マネーボール」('11)と来て本作のベネット・ミラー監督。フィックスのポジションを多用、「カポーティ」と同じく人物ダイアログの執拗なまでの切り返しに加えて、今回はフルショットでレスリングを描く。禁欲的なまでに音楽を排除し、突然品のないポップスで空気をかき乱す確信犯。
猪首で短足なレスラー達(俳優達の化けっぷりには恐れ入る)の、美しさとは程遠い組んず解れず。ゲイの匂い。
母親(ヴァネッサ・レッドグレーヴ、凄い)への「認められたいが決して認めてもらえない、馬以下の自分」というジョン・デュポン(スティーブ・カレル)の人格障害の要因を微細に描く。「はじまりのうた」の役からどうしてこうも凄まじく化けられるかと感心したのがマーク・ラファロ。このラファロがテレビカメラの前でジョン・デュポンへの賞賛の台詞を言わされる時の、一瞬の白けた表情の見事さ。そしてこのことが後の悲劇の引き金となるという物語のキモになっているという圧巻。
アメリカ映画の底力を見せつけられる一本。善い気分になるだけが映画ではない、傑作。