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「記者たち〜衝撃と畏怖の真実〜」監督ロブ・ライナー at TOHOシネマズ シャンテ

www.shockandawemovie.com  「LBJ」('17)に続き事実に基づいたアメリカの政治史を描くロブ・ライナー。先の「バイス」で描かれていた政治家、国家の陰謀をジャーナリスト側から描く。9.11以後の露骨な世論誘導、報道規制は「バイス」でチェイニーとラムズフェルド一派によって恣意的に行われたことがよく分かったが、一社だけそれに抗ったナイトリッダー社の記者たちの物語。ロブ・ライナー監督は編集長役も兼任、記者たちを発奮させる役どころ。ライナー監督、ランディ(ウディ・ハレルソン)とストローベル(ジェームズ・マースデン)二人の記者の会話の切り返し、新聞社と取材先の行ったり来たりを同じようなリズムで愚直なまでに繰り返す演出。そこに差し挟まれる2002年当時のニュース映像はあまり新味がない。「バイス」を先に見るか後に見るかで印象は違うにせよ、それでもさほどの新事実はない。国家的犯罪の犯人はジョージ・W・ブッシュという阿呆とそれを良いことに好き勝手したチェイニーとラムズフェルド、それはもう充分よく分かっている。真実の報道が果たして国民に届いていたのか、結果的には届いていなかった。それは何故なのかそこをこそ見たいと思った。政府の御用メディアを鵜呑みにする、イラクアフガニスタンも果たして区別がついていたかどうかも怪しい大衆そのものの単純な情動の方が恐ろしい。

 米国人というのは権力者であろうが市井の人であろうが演説が上手い。この映画に出て来るいくつかの演説はそれを物語っている。若き傷痍軍人の数字についての演説、編集長の正義についての演説、テレビ画面の中のブッシュの開戦の演説。言葉を伝える大切さ、新聞記事の文字も同じくだ。嘘を伝えることは容易く、真実を伝えることは難しい。

 新聞社に突如ロボットウォークで現れるギャロウェイ(トミー・リー・ジョーンズ)が良い。このギャロウェイ、胸につけているのは第1騎兵大隊の徽章。「地獄の黙示録」('79)の冒頭に出てくるヘリコプターの一群がこの大隊。ギャロウェイという人、検索によると第1騎兵大隊に記者として従軍、その体験を基に書いたのが「ワンス・アンド・フォーエバー」('02)の原作とのこと。なるほどそれでこの映画のラストシーンに繋がるのかと合点が行く。もって他山の石とせよ、我が国のメディアもまた危機的現状である。