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「なんのちゃんの第二次世界大戦」監督・河合健 at 洲本オリオン

nannochan.com嘗て教えていた大学の卒業制作発表でお世話になった洲本オリオンが、自ら製作に参加した映画を上映していると知って駆けつける。オール淡路島ロケ。

白羽ゼミ5期生卒業制作作品「あすなろ家族」淡路島上映会 at 洲本オリオン - 映画的日乗

 吹越満が某地方都市の市長、そして私の「みとりし」では余命僅かで殆ど声すら発さない役だった大方緋紗子が市長と対立する猛烈な石材屋、南野和子を演じていて、彼女の娘達の役の他は殆ど地元の素人だという。

 平和記念館設立計画を推進する行政側、市長の祖父が反戦活動家だったというお題目以外は設立理由が見当たらない。これに敢然と反対する南野一族。

和子の夫はBC級戦犯で処刑されたらしい。市長は改選を控えていて事を荒立てたくないと金で解決しようとするが‥‥。

 平和を語る、平和を謳うという事に常に付き纏う捉え所のなさ。

 記念館推進派は誰もその明確な哲学を持ち合わせていない。上辺だけ、お題目だけの薄っぺらさが良く表れている。

 それどころか市長の祖父が反戦活動家だったというのは実は嘘だったという事が明らかにされる。一方、当時軍国主義青年である事は洗脳の結果でもありそれ自体が罪である筈はない。本作でははっきりとその根拠が語られないBC級戦犯も然り、である。全ては歪な国家の犠牲者である。

 平和について空疎な言葉を並べ立てるが一方誰も戦争と戦争体験を語らない。河合監督は体験者が一人もいないのに太平洋戦争についての平和記念館を作るのだという胡散臭さを突いている。そして戦争体験の継承者たる側が強烈に反対姿勢を貫くのである。

 和子の孫(西めぐみ)が和子の遺品のサングラスをかけると和子が乗り移ってしまって口調も行動も変わるのは根拠がいまひとつ伝わらない。

 そして後半何故かウェス・アンターソンの影響が顔を出ししっちゃかめっちゃかに。

  整理しきれていない、素人が堂々と共演していて計算されていない間合いが生まれている点がかえってこの映画の魅力でもある。

 歴史修正主義を許さない圧倒的な熱量が「ゆきゆきて、神軍」('87)奥崎謙三を想起させる大方緋紗子さん、凄い。そして北香那の目の力を発見。