このドイツ語によるオフィシャルサイトのハッシュタグが印象的。
#makemusicnotwar
映画自体は2019年のドイツ映画だが、このハッシュタグをtwitterで検索すると今は殆どウクライナ戦争に関するツィートになる。
このサイトが映画公開時からあるのだとすれば、ハッシュタグは恐らくウクライナ戦争勃発以後に書き加えられたと推測する。
悲しいかな民族対立による憎悪と殺戮は終わる事がないという象徴でもある。
ザハヴィ監督はイスラエル人、ユダヤ人とパレスティナ人の対立する民族を対等に構成した楽団を描くに当たって、指揮者エドアルド(ペーター・シモニシェック)の両親がナチスだったという設定にしているのが功を奏している。
決して和解しようとしない両者に根気よく「相手を知ること」を試みるのは、エドアルドの贖罪の意識がそうさせている。
一触即発の喧嘩を乗り越えて和解、クライマックスは平和を象徴するコンサートの素晴らしい演奏でチャンチャン、だったらどうしようと思いながら観ていたが、製作者達はそんな馬鹿ではなかった。ただ、描かれる楽団員の行動はやや幼く、思慮が足らない。それ故に物語は和解から遠ざかって行く。
我儘で聞き分けのない一人の女性演奏家の振る舞いが伏線となっての悲惨な事件は分かり易過ぎる展開。が、それを吹き飛ばすのがラストの音楽、演奏の力。
ガラス一枚隔ててのラヴェル「ボレロ」の演奏は問答無用に力強い。
透明なガラス、お互いは見えているのに隔てている障壁は分厚い。
協奏の音だけが障壁をものともしない。
Make Music Not War はこのシーンそのものなのだが、この世界にはまだ血と涙が溢れている。