映画和日乗

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「君は放課後インソムニア」監督・池田千尋 at OSシネマズハーバーランド神戸

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 コミック原作、高校生が主人公と食傷気味の企画だが監督が池田千尋、そして何より七尾市が舞台ということで公開三日目の日曜に劇場へ。

 石川県七尾市の、不眠症の高校生丸太(奥平大兼)と伊吹(森七菜)の二人が天体観測を媒介にして惹かれ合うというお話し。登場人物の名前が皆能登地方の地名と気が付く。穴水さん役の安斎星来、良い。

 七尾市の中心を流れる御祓川に架かる橋を歩く彼ら、彼女らのショットが美しい。

ナイーヴな主人公二人の若いながらも背負っている過去が嫌味なく描かれる。殊更デフォルメされたような人物は現れず、子を亡くした過去を持つ田畑智子の、伊吹への慈しみも胸に沁みる。

 さて、丸太と伊吹は伊吹の姉が付き添うことを条件に天体観測合宿へ。目的地は能登町真脇遺跡。この微妙な距離感、さて合宿する場所は‥‥びっくり。

 穴水町の「能登の花ヨメ」のメインロケ地じゃないか。そこからいろいろ脳裏に記憶がよぎってあんまり冷静に観ていられなくなった。

 二人が佇む志ケ浦の内海も同じところだ。私の映画では田中美里と故内海桂子師匠が佇んでいた。15年前の風景と殆ど変わらない。

 本筋に話しを戻すと、伊吹の姉のせいで事件が起きて親に交際を反対された丸太と伊吹はロミオとジュリエット状態になる。伊吹が二階の自室から玄関先にいる丸太とやりとりするまんまロミオとジュリエットなシーンも切ない。ラストは未来への希望を感じさせる終わり方で爽やか。

 存分な能登ロケは嫉妬するくらい羨ましい。佳作、お勧め。