映画和日乗

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「哀れなるものたち」監督ヨルゴス・ランティモス at OSシネマズ神戸ハーバーランド

哀れなるものたち | Searchlight Pictures Japan


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 この「哀れなるものたち」のPR動画、何度も見てしまう。

世代的にとても幸せな気分になれるからだ。

最近、これは観たいと思う映画が減った。

アメリカ映画の幼稚化は末期的だし、今に始まった事ではないが邦画の貧乏臭さは眼を覆うばかりだ。

そんな中ゆりやんさんのこのPRは心に刺さったよ。「女王陛下のお気に入り」(2019)のヨルゴス・ランティモス「びっくり仰天」で「自慢の」最新作。

主演のエマ・ストーンはプロデュースも兼ねている。

 

mitts.hatenadiary.jp

妊娠していた自殺死体から胎児を取り出し、その脳を死体に移植して生き返らせる。

心臓の蘇生はどうなっているのだ、と疑問を挟むとこの後の物語は全て成立しないが、最早人間なのか妖怪なのか分からないバクスター博士(ウィリアム・デフォー)の立ち振る舞いが強引に物語へと誘う。

 欲望に忠実に生きようとするベラ(エマ・ストーン)は、関わる男達がキリスト教的道徳概念と支配欲で押さえつけようとするのを撥ね付けて行く。

性欲に忠実でそこに恋情を絡ませない本能剥き出しのベラに対して、男達の彼女への隷属と狼狽ぶりはまさしく「哀れなるものたち」。

結婚式の、あの黒い十字架は宗教の呪縛への挑戦、或いは嘲りとみた。

エロだグロだとの評もあるがイマの人は耐性が弱い。淀川先生なら鼻で嗤うかも。それほど悪趣味でもない。むしろ抑制が効いているくらいだ。

いやそれよりもラスト、あの「ヒツジ」に何故か鳥肌が立つほど感動した。

自分でもよく分からない。無意識にこういう展開を心待ちにしていて、その通りになったからかも知れない。佳作、お勧め。