小川洋子の同名小説の映画化。交通事故の後遺症で1975年までの記憶しかない数学博士(寺尾聰)。彼は日常生活において
は80分しか記憶がもたない。これまで何度も家政婦が変わっているのだが、ある日新しい家政婦(深津絵里)が派遣されて来る。
彼女とは相性が良かったのか、教授は数学の蘊蓄を語り、彼女の子供と共にうち解け合う。が、教授の義姉(浅丘ルリ子)は突然
家政婦を解雇してしまう…というお話し。映画は、長じて高校の数学教師になった家政婦の子供(吉岡秀隆)の回想という形式で
語られて行く。全くアップ・ショットの無い引き気味のキャメラ・フレームは、教授の家のセット・デザイン共々
計算され尽くしており、全体的なリズムがゆったりしているにも拘らず退屈することなくさらさらと流れるように映画は進む。
新ためて数学の基礎定理を知らせてくれる授業や'70年代阪神タイガースの蘊蓄は嬉しく楽しいが、
家政婦が教授と義姉の関係に気づくのが遅い(鈍い)ような気もする。
これまで説教臭さが好きになれなかった小泉監督作品、今作では少ない登場人物で語り尽くした演出技術に感服した。
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