映画和日乗

映画、食、人。西に東に。

                         

「原子力戦争 LOST LOVE」監督・黒木和雄 at シネマヴェーラ渋谷

1978年ATG作品。原作・田原総一朗
封切り時見逃していたので3月の某CS放送でのオンエアを心待ちにしていたのだが東日本大震災で放映が中止。今回渋谷のスクリーンでの対面となった。
冒頭、最早連日の報道で見慣れてしまった福島第一原発の遠景が映し出される。従って舞台はその福島原発の周辺の町。原田芳雄扮するチンピラヤクザが、突然帰郷した情婦を追ってこの町にやって来るが、女は数日前にエリート原発職員と共に心中死体として海岸に打ち上げられていた。この事件を端緒に、地元紙記者(佐藤慶)は原発事故の隠蔽疑惑に突き当たる。事件の真相を追う原田は何者かに襲われたり、地元衆から金を掴まされたりと益々町ぐるみの疑惑隠蔽の色が濃くなるが…というお話し。
'77当時の福島第一原発に突入する原田芳雄を無許可ゲリラ撮影しているカットの迫真と、原発職員の妻役山口小夜子の漂流するファムファタールのシュールが巧くかみ合っていない。しかし最も衝撃なのは原発お抱え学者役岡田英次原発擁護論。この当時の主張と直近の原発維持、容認論がほぼ同じなのだ。チャイナ・シンドロームに似た言葉も「ありえない」として飛び出す。日本の原発政策は30有余年変わっていないことが良く解る。この映画のロケ地は今どうなっているかと想像するだに悲しく、恐ろしい。


原子力戦争 (ちくま文庫)

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