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「007 スカイフォール」監督サム・メンデス at TOHOシネマズ西宮OS

イオンプロダクションによる007シリーズ第23作、第1作「007/ドクターノオ」('62)以来50周年の記念作。6代目ボンド、ダニエル・クレイグは3作目、そして監督サム・メンデス+撮影監督ロジャー・ディーキンスという当代一流のスタッフが初登板となった。
オープニングからして違う。いつもの銃口から覗いたあのアバン・タイトルからではない(これくらいはバラしても良いかと)。ロジャー・ディーキンスのキャメラはやや色を抜いたブルー基調のルック。そして光源を前面にした逆光のカットを多用している。冷徹な感じ、影のある、笑わないジェームズ・ボンドにふさわしい。そしてこれまでのお約束が次々に破られる。血糊だ。伏せった死体から溢れる血、M(ジュディ・デンチ)の血まみれの手などこのシリーズには無かった筈。
そして敵役シルヴァ(ハヴィエル・バルデム)は"両刀"、更に詳細は伏せるが彼の過去の刻印を示すレクター博士並みのグロテスクな瞬間。グロはこのシリーズではいつも寸止めだった。
事程左様に今までの定石を破りつつ、ストーリーが進行するにつれボンドシリーズのクラシックを踏襲する。6代目以降ボンド・カーはBMWで、今回もVWビートルを重機が踏みつぶすシーンがありてっきりスポンサードしていると思いきやBMWは終ぞ出て来ない。代わりに先祖帰りする名シーンがあって思わず落涙する程感激した。長らくこのシリーズにつき合って来た観客への粋なプレゼント。
そして上海のシーンの美術センスは圧倒的。エンドクレジットのロールに"Art"というセクション有り。この辺りはメンデス監督の面目躍如だろう。そして後半はボンドの幼少期の過去さえ描かれるという「掟破り」。
製作チームのこの50周年の一区切りは思いのほか大胆だった。ボンドもMもはっきりと「老い」が描かれ、Q(ベン・ウィショー)に至ってはイマ風のIT青年に取って代わっている。
果てさて、内容の詳細を巡る印象についてこれ以上は記さない。傑作である。お勧め。


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