映画和日乗

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「エンディング・ノート」監督・砂田麻美 at Cine Code Sonje

 2012年度日本映画監督協会新人賞の作品を韓国ソウルにて鑑賞。
 砂田麻美監督は、本作のPである是枝裕和監督の助監督だったそうだ。ご本人の父親の末期を捉えるという、ともすれば深淵な情緒で追うことに陥る「凡庸」を周到に避け、残酷にすら見え、聞こえるほど冷静にキャメラを回し続けている(しかし砂田監督の声がキビキビとして可愛いので図らずも中和されている)。
 それはこの砂田家に於いては「家族を映す」という行為がごく自然に行われていたことに由来するようだ。
ここに存在する膨大な家族の歴史のフィルム、ビデオのフッテージは、この「エンディング・ノート」という作品をつくらんが為に存在しているかのような記録である。
勿論、幸福な家族を捉え(時に夫婦喧嘩まで撮られている)ている時代に、砂田監督が「父が死ぬまで撮る」と明確に決意していた訳ではないだろう。しかし、映像と家族が結びついているこの一家にとって、映画の中でエンディング・ノートを綴る父親と、娘が捉え続ける映像のエンディング・ノートが自然に調和している。この父娘でしかなし得ない、唯一無二がここにある。誰にでも出来るようで実は誰にも出来ない記録の凄みに感動した。
人間を撮った映像に無駄なものは何も無いのだということを教えてくれる。
傑作。お勧め。


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