一青窈演じるヒロインはフリーライター。台湾に恋人がおり、その昔東京に住んでいた
という台湾の音楽家について調べている。神田神保町の古書店街を漂い、古書店で働く
浅野忠信やら、天ぷら屋の萩原聖人とどうということのない会話をする日々。
ある日彼女は実家のある高崎に帰り、両親に自分が妊娠していることを告げる…
という、平凡なストーリー展開。侯孝賢の映画を観なくなって随分たつ。
「戯夢人生」('93)までは良かったが、「好男好女」('95)で失速してしまった印象が
ある。そういう意味では、初期の「童年往事」('86)「戀戀風塵」('87)の匂いが今作には
蘇っていて楽しい。が、何より日本の、東京の風景を侯監督が嬉しくてたまらないという眼差しで
切り取っているのが印象的だ。やたら電車が出て来るのも、その表れだろう。
そういえば「戀戀風塵」のオープニングは電車だった。あれは素晴らしいショットだった。
とまれ、「それがどうした」というお話しで、音と風景を楽しむ映画になっている。
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