映画和日乗

映画、食、人。西に東に。

                         

「プラハ!」監督フィリップ・レンチ at KAVCシアター

'01のチェコ映画。1968年、「プラハの春」と呼ばれる、共産主義国チェコスロバキアにおいて市場経済移行への自由主義が花開きつつあった時代。高校生達の他愛ない「ひと夏の体験」物語をミュージカル調で描く。高島忠夫や団令子の'60年代東宝ミュージカルと「グローイング・アップ」シリーズをくっつけたような古くささに、一体この調子でどこまでやるんだと思って観ていたが、後半に至って政治に翻弄された人々の悲劇として昇華する展開に素直に感動させられてしまう。思うに、ミュージカルというスタイルを使って、過酷で暗澹たる時代を描く事を中和しているのであろう。かの国がいかにアメリカ文化に憧れ、自由主義を夢見たかということがストレートに伝わって来る。ソ連による蹂躙が'68年、共産政権崩壊はその21年後。そして現在、チェコスロバキアという国名は地図上から消えた。ラストに描かれる空を見上げる脱走兵の未来は、東欧圏の観客の胸を深くえぐったことだろうと想像する。