映画和日乗

映画、食、人。西に東に。

                         

「グエムル 漢江の怪物」監督ポン・ジュノ at 阪急会館

殺人の追憶」('03)のポン・ジュノ監督最新作。漢江という川沿いで売店を営むカンドゥ(ソン・ガンホ)。怠惰でどんよりした男で、妻に逃げられ中学生の娘(コ・アソン)と実父と暮らしている。希望は実の妹(ペ・ドゥナ)がアーチェリーの名選手ということだけだ。ある日、この漢江に得体の知れない巨大怪物が現れ、娘をさらって行く。カンドゥは怪物に触れた為、疫病罹患の疑いをかけられ、当局に拘束される。家出していたカンドゥの弟が戻り、一家あげて娘の救出に向かう…というお話し。
怪物のファースト・アタックとも言うべき、娘をさらうまでのスピード感は圧倒的に素晴らしい。カンドゥがぼんくらだが娘を思う一心で猪突猛進する様にも胸が熱くなるが、イラク戦争批判が透けて見える展開、ペ・ドゥナがなかなかアーチェリーの矢を放たない事で見えてしまう「決着」など、ひねりが今ひとつ。また米軍による環境汚染で生まれてしまった怪物なのにストーリーラインが「反米」に舵取りされているのでキャラクター描写が置いてけぼりになっている。何故に怪物が人食いなのか、また何故にさらった人間を一ヵ所に集めるのかが不明なのだ。いっそ怪物が米軍と戦えば、とも思ったが。しかし娯楽映画としては及第点だろう、入場料分は楽しめる。