「炎のジプシーブラス」('02)で観る者をトリコにしたファンファーレ・チォカリーアを含む、世界各地に散らばっていたジプシーバンドが集結、全米をツアーする様子をとらえたドキュメンタリー。ファンファーレはここでは「ファンファーラ・チョクルーリア」と表記され、ジプシーも差別的呼称とのことでロマと呼ばれている。ロマ音楽のルーツは北インド。ここに登場するインド代表の「マハラジャ」はロマ音楽というよりインド舞踊のルーツにも見える。同じく、スペインのフラメンコはロマ音楽がルーツ、と本作で明言されている。つまり、中央アジアからヨーロッパにかけての民俗音楽はすべからくロマの移動、集散によって発展して行ったとも解釈できる。相変わらず陽気満開のファンファーラは楽しいが、一方で各国で迫害されたロマの歴史も語られていく。
マケドニアとルーマニア、インドとスペインといった、違う旋律のロマ・バンドのセッションが素敵だ。ラストは切なく、そして力強い。