映画和日乗

映画、食、人。西に東に。

                         

「築地魚河岸三代目」監督・松原信吾 at 国際松竹

同名コミックの映画化。東京、築地の魚河岸「魚辰」のひとり娘・明日香(田中麗奈)の恋人・旬太郎(大沢たかお)は、商社に勤めるも社内人事の理不尽に嫌気がさしている。魚河岸の娘であることを隠して青山のアパレル会社で働く明日香だったが、ある時旬太郎に知れることになり、「魚辰」の人々と触れ合ううち、築地市場と、魚を扱う仕事に魅入られて行く…というお話し。ここに明日香の父で「魚辰」の二代目(伊東四朗)と、従業員の英二(伊原剛志)の「知られざる関係」や、定食屋の女主人(森口瑶子)の結婚話が絡むというてんこもり群像劇の脚本。松竹のベテラン松原監督のネタ捌きの術はまさに老舗魚河岸級の巧さ。更に築地市場や月島、東銀座界隈といったロケーションの困難な場所を縦横無尽に駆け回るHDキャメラのルックが素晴らしい(撮影・長沼六男+照明・中須岳士)。喫茶店の赤ライトシーンのみ疑問符の付くギャグだが、それ以外は言わずもがな松竹大船の職人技を堪能。かつて「美味しんぼ」('96)ではまるで美食を憎んでいるかのようなつくりだった松竹映画だったが10年余でようやくグルメ映画指向の片鱗を感じさせた本作、旬太郎の「舌」が活躍することを願って続編にも期待。