映画和日乗

映画、食、人。西に東に。

                         

「この国の空」監督・荒井晴彦 at シネリーブル神戸

「戦後70年」も「被爆」も描かれるスタイル、報道されるスタイルが予め決められていたかのような文言と描写に引きずり込まなければ気が済まない我が国のメディア。右は右なり左は左なりに鋳型にはめ込んだ「平和」「反戦」を語り、そこから逸脱するやいなや不謹慎、と謗る。それらに静かだが真っ向から異を唱えているのが本作。あの戦時中にだって「美味しいご飯」はあったし、恋もあったのだ。ここには狂信的愛国者憲兵も出て来ない。一方で豆を食べたの食べないので喧嘩をする姉妹や川で大らかに水浴びをする女が描かれ、トマトのやり取りで性の匂いを漂わせる。そして二階堂ふみの話す美しい日本語は最早この国から消えてしまった。
低予算製作で、スタジオセットでの撮影の不自由さが感じられない訳ではないが、フィルム撮影による丁寧で静謐なルックは好もしい。


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